身近な自然もいいね!

家庭菜園や庭の記録。日本各地の自然環境や身近な植物(時々珍しい植物)を紹介しています。

野生の植物じゃないけど-336.チャノキ-

暖かい緑茶がおいしい季節になってきましたね。ところでお茶の花って見たことありますか?お茶の花は今頃(11月)がちょうど見頃です。

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愛知県設楽町にて(11月19日)。以下、花の写真は撮影日・撮影場所同じです。

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この茶畑は管理放棄されていて、人知れず見頃を迎えていました。

管理されている茶畑でもこんなにたくさん花が咲くかどうかはわかりませんが、生垣や粗放的な管理下のお茶なら、この時期たくさんの花を咲かせます。お茶の生垣ってあまり見かけませんが、子供の頃の近所の家にあって、お茶の実をとって遊んだ記憶があります。ところでお茶の花、同じ頃に咲く何かの花に似ていませんか?

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公園に植栽されていたサザンカ(12月1日)。このサザンカは八重咲の園芸品種なのでチャノキの花とはあまり似ていませんね😅野生のサザンカは一重で花色も白色なのでチャノキの花に似ています。

すぐにわかった方は分類のセンスがありますね。正解はサザンカです。植栽されているサザンカは様々な品種があり、特に花色が赤色系のものが多いのでチャノキとサザンカを結びつけるのは難しいかもしれません。サザンカは漢字で書くと山茶花。山に咲くお茶に似た花が名前の由来ですね(多分)。つまりチャノキの花がサザンカに似ているのではなく、サザンカの花がチャノキに似ているというべきなんですね。

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園芸的な価値はありませんが、飲料として重宝され様々な品種があるのだと思います。

チャノキはツバキ科ツバキ属の常緑低木(じょうりょくていぼく:冬にも葉がついている、4m程度以下の木本)で、古くに中国から導入された栽培植物です。中国南西部、ミャンマー北部、ラオスといった温暖な地域で自生が報告されているようです。チャノキの故郷を反映して、国内のお茶の有名な産地も関東以西の暖温帯域(静岡、京都、岐阜の揖斐、熊本等)に分布しています。

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岐阜県関市にて(11月26日)。周囲には茶畑がなかったけどスギ植林に生育していた。

訪問して下さっている方々の中には、「なんで栽培植物?」と思った方もいらっしゃるかと思います。実はチャノキは結構身近なところに逸出していて、人里近い樹林ではごく普通に生育しているのです。常緑広葉樹林や竹林といった林内が薄暗い環境では、草本層の優占種がチャノキなんてこともあり、「ほぼ野生植物じゃん!」とびっくりすることもあります。さすがに林内で人の背丈以上に成長して花を咲かせているような個体には出会ったことはありませんが、最近は人里近くの樹林や藪が管理放棄され、温暖化も加わって、そのうち低木層でチャノキが優占するかもしれません。野生のチャノキでお茶をつくることも可能になるかも。Wild teaとかちょっと格好よくないですか😁

チャノキの特徴は次の2点です。

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①葉:葉は互生し、長楕円形で、縁は波打ち、鋸歯があります。常緑なので葉は硬く、濃い緑色をしています。葉脈は表面でくぼみ、裏側にやや隆起します。葉脈の雰囲気と葉の縁の波打ち方が特徴的で、葉だけでも簡単に同定できます。

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②花:開花時期は晩秋から初冬で、花弁は白色で5-7枚。直径は2-3cmで、ツバキ属の中では小型の花と言えます。雄しべは多数です。

チャノキに似た植物はありませんが、葉だけだとキンモクセイやギンモクセイが似た雰囲気です。ただ、いずれもあまり逸出していることはなく、キンモクセイとギンモクセイは葉が対生する点で異なります。