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家庭菜園や庭の記録。日本各地の自然環境や身近な植物(時々珍しい植物)を紹介しています。

お正月の木-344.アリドオシ

正月飾りには常緑の葉に赤い実をつける、ナンテンマンリョウ、センリョウなどがよく使われますね。私は知りませんでしたが、今回紹介するアリドオシも縁起物の植物とされているようです。

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三重県熊野市にて(12月12日)。赤い実がついているのですがわかりますか?

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三重県尾鷲市にて(2月21日)。記載ないものは撮影日・撮影場所同じです。

アリドオシの別名?は「一両」だそうです。確かに、青々とした葉の量に比べると実の数が少なく、実も小さいですね。

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これはセンリョウ。確かに華やかさが全く違いますね。三重県熊野市(12月12日)。

実の華やかさをセンリョウ(千両)やマンリョウ(万両)と比較すれば、アリドオシが一両というのは妥当かもしれません。ちなみに十両ヤブコウジ、百両はカラタチバナとなります。

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30㎝以下の個体ですが、すごい刺…😮。これを掘り取るのは大変ですね。

縁起物の植物の割にアリドオシをあまり目にしない理由としては、華やかさが無いという点もありますが、枝に鋭い刺が多数あることも関係しているかもしれません。枝には長さ1㎝以上にもなる鋭い刺があり、これが刺さると結構痛いんですよね…。飾り用に加工するには、この刺はやっかいだと思います。

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アリドオシは葉の大きさや刺の長さの変異が大きい植物です。

アリドオシはアカネ科アリドオシ属の常緑低木(じょうりょくていぼく:冬にも葉がついている、4m程度以下の木本)で、本州(関東以西)~九州に分布しています。大きなものでも1mには達しないので、小さいという点では鉢物には向いているのかもしれません。常緑広葉樹林内に生育します。アリドオシ属の植物は改訂新版日本の野生植物(平凡社では5種が掲載され、さらに変種が3種ほど掲載されています。これよりも古い図鑑や文献では、種数が2種(変種は多数)とされていたり、変種や品種を含めて14種が掲載されていたり、学名と和名の対応が図鑑によって異なっていたりと、結構混沌としていました。アリドオシの仲間は葉の長さと形状、刺の長さに変異があるので、変異幅をどう捉えるかによって、見解がわかれていたんだと思います。私もそれほど見慣れていないので、どちらかというと苦手なグループの一つです。

アリドオシの特徴は次の3点です。

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①枝:若い枝には短毛があり、葉の付け根に上下に長さ7-20㎜の刺が出ます。刺は付け根の葉の2/3以上の長さになるものが多いです。

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②葉:葉は枝に対して平面状につき、対生(たいせい:葉が対になって着く)します。葉は大きい葉のペアと小さい葉のペアが交互につき、基本的には大きい葉の葉腋に刺が出ます。葉の大きさは1-3㎝程度で、形状は卵形~広卵形、全縁(ぜんえん:葉の縁にギザギザがない)です。

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③実:枝の先端や中程の葉腋に直径4-5㎜の赤い実をつけます。

比較的よく目にする類似種としては、ジュズネノキとオオアリドオシがあげられます。ジュズネノキは葉が楕円形~披針形で大きさも2-6㎝と大きく、刺が2㎜以下と短い点が異なります。オオアリドオシは葉がアリドオシよりもひとまわり大きく、その結果刺の長さが葉の半分以下となる点が異なります。