身近な自然もいいね!

家庭菜園や庭の記録。日本各地の自然環境や身近な植物(時々珍しい植物)を紹介しています。

フワフワッとした花-328.ボタンヅル-

山沿いの道路を歩いているとフワフワッとした白い泡のような花が咲いていました。ボタンヅルです。

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愛知県設楽町にて(8月12日)。以下、産地記載同じものは撮影日同じです。

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岐阜県飛騨市にて(8月12日)。時間が経過するほど雄しべは開く。

近づいて見ると白い小さな花が集まっていました。とても上品な花で、糸状の雄蕊がクジャクの羽のように半球状にひろがっています。

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園芸種のクレマチスと同じ仲間と聞くと、きれいさに納得(愛知県設楽町)。

ボタンヅルはつる植物で、他の植物にからみついてある程度の大きさにならないと花をつけません。そのため林内のような暗い所では花を咲かせることはなく、林縁や草地といった明るい環境で花を咲かせます。花は背景が緑色だと結構目立ちますが、夏の強い日差しに照らされると色がとんでしまい思ったより目立ちません。朝夕の涼しい(最近の真夏は朝夕も涼しくないですが…)時間帯の観察がおすすめです。

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きれいなつる植物は野山で見るに限ります(岐阜県飛騨市)。

ボタンヅルはキンポウゲ科センニンソウ属の多年草(たねんそう:地下部が2年以上生存し、毎年花や実をつける)で、本州・四国・九州に分布します。厳密に多年草なのか木本なのかは判断が難しい感じもしますが、フジやクズのように茎が木化して太くなることはないと思います。概ね落葉性ですが、暖地では一部の葉が越冬するようです。明るい落葉広葉樹林内や林縁、草地に生育します。

ボタンヅルの特徴は次の3点です。

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①全体容姿:地表を這うか、他の植物にからまって成長するつる植物です。

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②葉:葉は対生し、形状は基本1回3出複葉です。小葉は粗い不規則な鋸歯(きょし:葉の縁のぎざぎざ)があり、大きな切れ込みが入る時もあります。葉脈は表面でくぼむような感じです。

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③花:花は葉腋から伸びる円錐花序に多数つきます。花の直径は1cm程度で、色は白色からクリーム色、花弁のように見えるのは萼片で、萼片は4枚です。花弁はありません。

類似種としては変種のコボタンヅルがあります。大きな違いは葉の切れ込み方が2回3出複葉という点ですが、これがなかなかやっかいです。

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この写真だけ見れば、葉の切れ込み方からコボタンヅルと言えそうです。

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でも同一の個体群の中に写真のような中途半端な切れ込みの形状のものが少なからずあります。ボタンヅルは多年生のつる植物なので、花を咲かせるような大型個体になると、そもそも何個体で、どれとどれが別個体というのすらわからなくなります。1回3出複葉から2回3出複葉まで様々な葉がある場合、ボタンヅルとコボタンヅルが混生しているということなのでしょうか?個人的にはそんなことないような気がするのですが…🤔。もし、これをボタンヅルとコボタンヅルの混生というなら、中途半端な形状の葉の存在を考えると、ボタンヅルとコボタンヅルを分ける必要はないような気がします。

図鑑によってはボタンヅルの果実は有毛、コボタンヅルは無毛と記載されているものもあるようですが、コボタンヅルの果実も毛があるらしいです。ひょっとしたら毛の生え方が違うのかもしれませんが、観察不足なので、ちょっとそのあたりはよくわかりません。ボタンヅルとコボタンヅルの明確な識別点(あるなら)を見つける必要がありそうです。