身近な自然もいいね!

家庭菜園や庭の記録。日本各地の自然環境や身近な植物(時々珍しい植物)を紹介しています。

花と香りが楽しめる-320.テイカカズラ-

山道を歩いているとフワッと華やかな香りが一瞬しました。ふと視線を斜め前方に向けるとテイカカズラ満開の時期を迎えていました。私はあまり匂いに敏感ではないのですが、テイカカズラの香りには気付きます。

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岐阜県土岐市にて(5月29日)。産地記載ないものは撮影日・撮影場所同じです。

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星型の花もとてもきれい!目と香りの両方が楽しめます。

春の花が終わった5月下旬~6月にかけて、「花が少なくなったな~」という頃に満開を迎えます。被写体の競合相手が少ない時期のため、新緑のこの時期のスター(星形の花だけに)といってよいでしょう。ついつい出会う度に写真を撮影してしまいます。甘い雰囲気の香りがするので、蜜もたくさん入っているのかもしれません。でも、決して口にしてはいけません!!テイカカズラ有毒植物で、トラチェロシドという毒成分を全草に含んでいます。薬草としても使用されるようですが、摂取しすぎると心臓麻痺や呼吸麻痺といった症状が出るようなので、素人は手を出してはいけません。茎をちぎると白い汁が出て、これも触ると炎症を起こす場合があるようなので、注意が必要なようです(「野外毒本」羽根田治著を参照)。

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岩場を覆うほど立派に成長した個体。どのくらいの年月がたったのかな?

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こちらは竹林内の木に絡みついた個体。岡山県美作市にて(6月10日)。

テイカカズラキョウチクトウ科テイカカズラ属の常緑藤本(じょうりょくとうほん:冬にも葉がある、木化するつる植物)で、本州・四国・九州に分布します。暖地ではごく普通の植物で、樹林内や林縁に生育します。林内や木の幹を這っているような個体は花をつけませんが、岩や木の梢を覆いつくすまでに成長した個体が花をつけます。直立する木々同様、ある程度成長しないと花をつけないようです。絡まれた木の方は迷惑かもしれませんね…。

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見事な咲きっぷり!これを庭で育てるのは大変。愛知県新城市にて(6月3日)。

園芸植物でハツユキカズラというのがありますが、これは葉が小さく白やピンクの模様が入ったテイカカズラの園芸品種です。鉢に収まる程度で栽培する場合が多いので、花が咲いているのにお目にかかったことはありません。ハツユキカズラも思い通りに成長させたら花が咲くのだろうか?ちなみに、テイカカズラも小型の若い葉には少し白い斑が入りますが、大きな個体の葉には殆ど斑が入りません。ハツユキカズラも大きくしたら斑が消えちゃったりして(笑)。

テイカカズラの特徴は次の3点です。

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①幹や枝:つる植物で地表や木の幹を這います。若い枝には短毛があります。

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②葉:葉は対生(たいせい:葉が対になって着く)し、常緑なので厚みがあります。全体殆ど無毛で、鋸歯(きょし:葉の縁のぎざぎざ)は無く、葉は狭い楕円形~披針形(ひしんけい:かなり細長い卵型)、大きさは2-7cm。葉の大きさや色合いには変化がありますが、林内の小型の個体は葉が小さく、緑も濃く、葉に薄く白い斑が出ることが多いです。花の咲くような大型の個体の葉は大きく、緑はやや薄く(新葉は黄緑色)、白い斑が出ることはありません。葉の裏面の脈の見え方が特徴的で、細かい脈までうっすらと見え、側脈の先端が隣同士の支脈と結合します。

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③花:花は筒状で先端は5枚の花弁のように分かれます(筒状なので基部でくっついている)。直径は2cm前後で、色は基本白色で、中央や筒の部分が黄色になります。筒の部分は聖火を灯すトーチのような雰囲気で、基部は細く、花弁側は太くなっています。

似ている植物としては温帯域ならツルマサキがあげられます。

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ツルマサキは縁に波打つような鋸歯があり、裏面の脈がよく見えない点で異なります。九州南部のような暖地では類似種にケテイカカズラがあげられます。ケテイカカズラは葉の裏面に毛を密生し、花の筒の細い部分が短い点が異なります。