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家庭菜園や庭の記録。日本各地の自然環境や身近な植物(時々珍しい植物)を紹介しています。

秋といえばタデの仲間-212.ホソバイヌタデ-

ホソバイヌタデは少し珍しい植物で環境省絶滅危惧種に指定されています。

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新潟県新潟市にて(9月29日)。花が咲き始めの個体。

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新潟県新潟市にて(10月11日)。実ができはじめの個体。

滅危惧種に指定されている植物の中には、様々な分布パターンのものがあります。産地、個体数とも少ないもの、産地はたくさんあるが個体数が少ないもの、産地は少ないが個体数は多いもの、中には産地、個体数ともやや多いものなど・・・。ホソバイヌタデは「産地は少ないが個体数は多いタイプ」ではないかと思われます。産地に行けばかなりまとまった個体数が観察されます。

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ホソバイヌタデの群生。カナムグラの上にのっかるように生育。新潟県阿賀野市(10月12日)

とは言っても、毎年見るような植物ではないので、全国的には多くないと思います。

ホソバイヌタデタデ科イヌタデ属の一年草(いちねんそう:生育不適期を種子過ごし、発芽から結実までが1年以内の植物)で、本州(近畿以東)に分布します。私はこれまでに大河川の中下流域のオギ草地や明るいヤナギ群落の林床で見たことがあります。山間地の小河川にはあまり生育していないような気がします。

ホソバイヌタデの特徴は次の4点です。
①個体サイズと容姿:通常膝丈以下で、基部でよく分枝し、大きな株になります。
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②葉:「ホソバ」と名前につきますが、葉の幅はイヌタデと殆どかわりません。ただイヌタデに比べると幅の最も広い部分が下側になり、披針形(ひしんけい:かなり細長い卵型)という形状になります。葉先がイヌタデに比べるとスラーッとなることから「ホソバ」と名づけられたのでしょう。一番の特徴は葉の裏に黄色の少しもりあがった腺点という点が散在することです。ただし、この腺点は多い個体もあれば殆どない個体もあるので、かなり注意深く見る必要があります。
③托葉鞘(たくようしょう):葉の付け根にある筒状のものが托葉鞘と呼ばれるものです(写真参照)。この托葉鞘の縁に短い毛があります。
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花はイヌタデに似て密集してつきます。花の色はイヌタデよりも薄いピンク色で、花びらに葉裏と同様の薄い黄色の腺点が散在します。腺点の量は個体差がありますが、葉よりも花で探したほうがみつけやすいかもしれません。


イヌタデとかなり似ている植物ですが、慣れれば簡単に見分けられます。河川敷で花の色が若干うすく、葉もスラーっとしていればホソバイヌタデかもと疑ってみます。そしてルーペで花や葉の腺点を念入りに探してみて、腺点を一つでも見つけることができれば、ホソバイヌタデと判断できます。

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イヌタデと混生するホソバイヌタデ。違いがわかりますか?新潟県新潟市(10月11日)。

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並べて比較してみるとこんな感じ。ホソバイヌタデの方が葉が大きい・・・。