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家庭菜園や庭の記録。日本各地の自然環境や身近な植物(時々珍しい植物)を紹介しています。

グッドデザイン賞-286.ツリフネソウ-

秋に水辺の樹林内や林縁を歩いているとよく出会うのが、このツリフネソウ。いつ見ても、この花は素晴らしいと思います。河畔林などでは群生することもあり、そんな光景に出会うとラッキーだなーと感じます。

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新潟県阿賀野市にて(10月12日)。河畔のヤナギ林の林縁に群生していた。

 

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新潟県五泉市にて(9月20日)。咲き始めの時期です。

 

まず素晴らしいのが花の色。鮮やかな濃いピンク色に、黄色の斑点、これは目立ちます。さらにこの花が緑色の葉の上に咲くので、さらに目立ちます。写真映えしますね~。

 

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新潟県五泉市にて(9月20日)。ツリフネソウの仲間に似た形の花はあまりない。

 

次に素晴らしいのが花の形。花の形は正面から見るのもよいですが、横から見ると特に面白いです。入口は大きく開き、徐々に細くなって最後はカタツムリのように渦巻状になります。大きな入り口で蜂を呼び込み、奥を狭くすることによって蜂をモゾモゾ動かして花粉をつけさせるといった効果があるのかもしれません。最後のカタツムリは何の意味が…?

 

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新潟県阿賀野市にて(10月12日)。雨上がりの寒空で蜂はあまり飛んでいなかった。


最後に素晴らしいのが名前。ツリフネソウの大きな花は細い花茎の先についています。これに蜂が入ると(乗船すると)、ユラユラとゆれます。吊り下げられた船にみたてて、ツリフネソウという名前になったのでしょう。いいですね~。ツリフネソウの船は、よく見ると近未来的な宇宙船のようにも見えます。

 

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青森県西目屋村にて(9月16日)。若い果実がついている。熟すと弾けて種を飛ばす。

 

ツリフネソウはツリフネソウ科ツリフネソウ属の一年草(いちねんそう:生育不適期を種子過ごし、発芽から結実までが1年以内の植物)で、北海道~九州の湿地や明るい湿った樹林内に生育します。ツリフネソウは園芸植物のホウセンカと同じ属(インパチェンス)の植物です。和製ホウセンカといった感じです。みずみずしい植物でおいしそうな印象を受けます(私だけ?)が、有毒植物なので、くれぐれも間違って食べないようにして下さい。

ツリフネソウの特徴は次の3点です。

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①葉:形は菱状の楕円形~倒卵形で、縁に細かい鋸歯があります。茎と共にとてもみずみずしい感じの葉でわずかに毛があります。葉は互生(ごせい:葉が交互に着く)しますが、茎の上部は間隔が極端に短くなり、輪生(りんせい:1節から3枚以上の葉が着く)しているような雰囲気になります。

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②花序:花序は上部の葉の腋から伸び、葉の上に伸びます。
③花:とにかく花の色と形が特徴的です。花が咲けば間違える植物は殆どありませんが、細かいところを言えば、唇弁(しんべん:花びらのうち舌のようにベロンとなった部分)の基部に角状の突起があることが、類似種のワタラセツリフネソウとの違いのようです。

 

似た植物でよく見るのはキツリフネ。その名の通り黄色いツリフネソウです。これはさすがに間違えることはありません。

 

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青森県西目屋村にて(10月12日)。ツリフネソウと混生することもあります。


珍しいものでは、花序が葉の下につくエンシュウツリフネソウ、ハガクレツリフネというものがあります。ツリフネソウに酷似しているものにワタラセツリフネソウというのがありますが、これは前述したように新弁の基部の突起の形が異なるようで、花が咲かないと区別はできません。