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家庭菜園や庭の記録。日本各地の自然環境や身近な植物(時々珍しい植物)を紹介しています。

美しいお名前-240.ヒトリシズカ-

ゴールデンウィークを過ぎるとうちの近所(岐阜県南部)はすっかり初夏の装いです。でも日本は広く、北日本や標高の高い地域では春まっさかりの頃でしょう。もう少し春の気分でいたいので、春植物を紹介していきます。ヒトリシズカです。

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福島県いわき市にて(4月26日)。尾根沿いの明るいコナラ林の林床に生育。

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岐阜県高山市にて(5月31日)。こちらは沢沿いのサワグルミ林に生育。

いかにも美人という雰囲気の名前で、名前にぴったりの容姿をしています。しかもすごい目立つというわけではなく、控えめにきれいといった感じです。日本人好みの花だと思いませんかヒトリシズカというからには一人でたたずんでいるかと思いきや、結構かたまって生育していることが多いです。

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福島県いわき市にて(4月26日)。花序が一つなのでヒトリシズカという名前。

「一人じゃないじゃん?」と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、花序が一人(一つ)なのでヒトリシズカなんですよね。似た名前のフタリシズカは花序にちゃんと二人(二つ)いますね。

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岐阜県可児市にて(5月26日)。こちらは花序が二つでフタリシズカ

ヒトリシズカはセンリョウ科チャラン属の多年草(たねんそう:地下部が2年以上生存し、毎年花や実をつける)で、北海道~九州の落葉広葉樹林内に生育します。一見すると春が終わると枯れてしまうような印象を受けますが、夏以降も葉は元気に生育します。

トリシズカの特徴は次の3点です。
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①葉:鋸歯のある大きな葉は4枚で、4枚が輪生(りんせい:1節から3枚以上の葉が着く)するように見えます。でもよく見ると、輪生ではなく対生(たいせい:葉が対になって着く)する2枚の葉が非常に近接してついているということがわかります。葉には光沢があり、夏場でも若干つやがあるように見えます。
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②花序:試験管ブラシのような花序が茎の先端に1個だけつき、長さは花の時期で2-3cm。多数の花をつけます。
③花: 花は白色。白色に見える糸状の部分は花弁ではなく、雄蕊の一部(正確には約かくと呼ぶ)で、長さは5mm程度です。


花が咲いていれば、まず間違える植物はありません。中国地方と四国地方の瀬戸内側や九州北部にはキビヒトリシズカという超類似種があるようですが、レアものなので、そうそう出会うことはないと思います。葉だけだとフタリシズカと似ていますが、フタリシズカは葉に光沢がなく、2対の葉の間に普通少し隙間ができるので、慣れれば簡単に見分けられます。