植生図の凡例の決め方(その1)
以前、植生図の精度について書きましたが、今回は凡例について。
当然ながら植生図の凡例は非常に重要です。これが間違っていたら元も子もありません。
植生図を作成する際に全ての作図範囲を見ることができたら、凡例は目的に合わせて、見たとおりに決めればよいと思います。
岐阜県関市の自宅周辺の山。自宅周辺の植生図を作成するとしたら、ほぼ全て目視可能。
例えば、自宅周辺の植生図を作成しようとした場合、全てを目視確認できるので、いくらでも凡例を細かくすることができます。同じコナラ群落でも、桜がきれいな樹林はコナラ-カスミザクラ群落、普通のコナラ林はコナラ-アベマキ群落のように分けることもできます。この場合、非常に精度の細かい植生図ができあがります。
でも、環境省の植生図のように日本全国で作成するとなると、当然大半が目視確認できません。ドローンにAIロボットを搭載して、全てを確認してきてもらえればありがたいのですが、現実的にはそういうわけにはいきません。そうなると航空写真、既存の文献等の資料、一部の現地確認の情報をあわせて、見ていない範囲も、凡例を決めて作図することになります。ここがうでのみせどころ(?)です。
プロ意識が高くなると、当然大雑把な植生図よりかは細かい植生図を作成したほうがよいと思うようになります(当然)。植生図の凡例が「落葉広葉樹林」「草地」・・・のような場合と、「ヒメアオキ-ブナ群集」「ノハナショウブ-ススキ群集」・・・のような場合、絶対に後者の凡例の方が正しく信頼があるように見えますよね。植生を確認することができる場合は、後者のようにわかる範囲で細かくしたほうが当然質の高い植生図といえます。でも、植生が確認できない場合、本当に後者のような細かい区分を使用したほうがよいのでしょうか?見に行ってなければ、間違っている可能性もありますよね。
全ての範囲を確認できないような場合、100%正しい植生図を作成することは不可能ですが、できるだけ正しい植生図を作成したいものです。見ていない植生をいかにリアルに近づけるか?私は凡例を大雑把にすることで、リアルな植生に近づけることが可能と考えています。凡例を大雑把にするということは、雑に群落の境界線を引くという意味ではなく、植生の特徴を大まかに捉えるという意味です(続く)。