春をつげるヤナギ-122.アカメヤナギ-
低木のヤナギが続いたので、高木になるヤナギを紹介します。アカメヤナギです。別名、マルバヤナギとも言います。
日本の野生植物(平凡社)では、マルバヤナギを標準的な和名としていますが、エゾノタカネヤナギというヤナギもマルバヤナギと呼ばれるので、混同を防ぐため、私はアカメヤナギという名称を通常使っています。
若芽が赤くなるのも特徴のひとつ。東京都多摩市にて(7月3日)。
アカメヤナギという名称は、若芽が赤いからついたものと思われます。しかし、若芽が赤っぽくなるのは、アカメヤナギだけではありません。若芽が赤いだけでは、アカメヤナギと決め付けないほうがよいかもしれません。
アカメヤナギはヤナギ科ヤナギ属の落葉高木(らくようこうぼく:冬に葉が落ちる木。高さの決まりはないですが、10m以上はあります)で、本州(宮城・山形以南)、四国、九州に分布します。河川の中流より下流側の河畔や、池沼のほとり、放棄水田などに生育します。
アカメヤナギは単独、もしくはジャヤナギなどと混生して、立派な高木林を形成します。私の住む岐阜の河川の中下流域で高木になるヤナギは、このアカメヤナギの他、ジャヤナギ、コゴメヤナギぐらいです。他の地域では種に違いはありますが、高木になるヤナギは限られているので、地域と環境がわかれば、ある程度種類がしぼることができます。
アカメヤナギの特徴は、次の4点です。
①生育場所:流れの緩い水辺や止水の水辺に生育します。河畔の土壌は泥質のところが多いです。水に浸かって生える時もあります。
②大きさ:高木です。大きいものでは直径が30cm前後になります。
③葉:葉は互生(ごせい:葉が交互に着く)し、楕円形~丸っこい楕円形。無毛で、葉の裏面は白っぽいです。葉の付け根に大きな円形の托葉(たくよう:葉の付け根にある小さな葉状の付属片)があります。この托葉が一番の特徴で、これさえ確認すれば、アカメヤナギでほぼ間違いないと思います。
④花:ヤナギは雄株と雌株があるのですが、雄株の場合、雄花のおしべが3~5本です(多くのヤナギはおしべが2本)。雌花の場合、子房は無毛で長い柄があります。
托葉が特徴的なので、あまり似ている仲間はないです。ただ、托葉は古くなるとなくなります。托葉がなくなった後はの若木はジャヤナギと似る時もあります。