身近な自然もいいね!

家庭菜園や庭の記録。日本各地の自然環境や身近な植物(時々珍しい植物)を紹介しています。

礼文島その2〔起登臼川の南側小河川周辺〕-(北海道礼文町)-

車で移動している際に気になった場所がありました。そこは東海岸沿いの岩場で、トドマツ群落、ミヤマビャクシン群落、断崖地草本群落がきれいに連続して分布していました。

 

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東海岸道路脇の植生。ネットで覆われているのは道路脇ということでしょうがない。

 

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マット状の濃い緑色がミヤマビャクシン群落。登って植生調査はさすがに無理。

 

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ミヤマビャクシン。なんとか手の届く個体がありました。実がなっています。

 

特に岩を覆うように成立したミヤマビャクシン群落が近い距離で見ることができ、とても見応えがあります(澄海岬でもそれらしい群落は見えるが距離が遠い)。ミヤマビャクシンは北海道の絶滅危惧植物(絶滅危惧II類)なので、このまま群落を残しておいてほしいものです。

 

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断崖地草本群落には様々なタイプがあるが、アサギリソウが多く生育しているところはその他の植物が少ない。それだけ厳しい環境なのかも。


さらに断崖地草本群落も素晴らしいです。ここの群落には外来種も殆ど入っていないので(路傍にはあります)、いかにも自然といった感じです。断崖地に生育している植物で一番出会えてうれしかったのは、アサギリソウ。

 

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アサギリソウ。白くてフワフワな毛のはえた葉が気持ちいい。茎の先端に小さなつぼみが見える。

 

実はアサギリソウはうちの庭の植木鉢にもあります。葉が白くてきれいなため園芸用に結構出回っているようです。そもそもどんな場所に生育しているか知らなかったので、自然の状態で生育しているアサギリソウを見た時は感激しました。こんな厳しい環境がふるさとだったんだね~。ちなみに、アサギリソウを温暖な地域で栽培すると花をつけないようです(うちのも咲いたことがない)。ぬるま湯で育つとダメなんですかね~。

 

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断崖地を流れる名もなき川。奥には立派なトドマツ林が見えるが、礼文島では立派な樹林が見られる場所は限られている。


北海道ではごく普通のトドマツ群落ですが、この場所周辺では立派な群落が見られたものの、先に訪れた澄海岬から見える海沿いの断崖地(西海岸)にはトドマツのような高木性樹種の樹林が殆どありませんでした。このような植生の違いは礼文島の斜面方位による冬場の気象条件の違いが関係しているようです。礼文島は南北に長い島ですが、島の中央の低い山脈を境に東側と西側で気象条件が大きく異なるようです。東側は冬場の季節風の風下側にあたり、風が弱く、積雪によって気温の低下も抑えられています。一方、西側は季節風がもろに当たり、雪が飛ばされてしまうところもあるようです。積雪がないと、気温の低下も著しく、西側斜面は東側斜面に比べると冬場は大変厳しい環境のようです(礼文花の島を歩く.杣田美野里・宮本誠一郎を参考)。こんな小さな島でも微妙な気象条件の違いで植生が大きく変わってしまうというのは本当に面白いですね。

この場所で見ることができた植物たち。

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イワベンケイ。最初はミセバヤかと思いましたが、既に花が終わっていたのでミセバヤではないと気づきました。5月下旬頃に黄色の花が咲くようです。

 

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コモチレンゲ(レブンイワレンゲ)。花はもう少し先のようです。走出枝を出すのが特徴のようだけど気づかなかったな~。

 

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イブキジャコウソウ。花の少ない時期だったけどちょうど満開でした。