平地の秋の花-82.エゾシロネ-
湿地に生育する植物を続けます。花の目立たないエゾシロネです。
茎1本では目立たない雰囲気があります。北海道稚内市(9月3日)にて。
こんな感じで群生するので結構目につきます。北海道稚内市(9月3日)にて。
エゾシロネの大きさは20-50cmぐらいなので、こんな植物が草むらにあったら目につかないだろうな~と思う方もいらっしゃるかもしれません。ところが、エゾシロネは基部から多数分枝して株状になり、地下茎で群生することが多いので、かなり存在感があります。生育量の多い地域であれば、すぐに目にとびこんでくるはずです。
エゾシロネはシソ科シロネ属の多年草(たねんそう:地下部が2年以上生存し、毎年花や実をつける)で、北海道~九州の湿地に分布します。ただ、名前に“エゾ”とつくだけに、冷涼な地方で目にすることが多いです。北海道や東北では低地(標高の低い場所)でも見られますが、岐阜県あたりでは、低地よりも山地に近い場所で目にする機会が多いです。
エゾシロネの特徴は次の3点です。
①葉:葉は対生し、ひし形で鋸歯があります。平面的で縁が立体的に波打つことはありません。
②花序:葉脇に多数の小さな花が密集します。
③果実:果実というより萼片(がくへん:コップ状の顎の縁の部分の片。写真参照)の形に特徴があります。萼片が正三角形状で、先があまり尖りません。そのため果実はトゲトゲした感じがなく、プクッとした感じになります。私はこの果実の印象が強く残ります。
シロネ属には、他にシロネ、ヒメシロネ、コシロネ等があります。皆、全体的なつくりは似ていますが、葉や果実等に違いがあります。見慣れれば識別は比較的容易な分類群だと思います。