平地の秋の花-77.イヌタデ-
畑地等でみるタイプは小型(高さ30-40cmくらい)です。神奈川県平塚市(10月13日)にて。
イヌタデは路傍や耕作地周辺でよく見かけます。オオイヌタデよりも小型で、1個体では目立ちませんが、休耕田などに群生するとかなりきれいに見えます。イヌタデは人くさい環境に多い植物ですが、河川敷の湿った草地などにも生育します。そのような時には畑に生育しているものと同じとは思えないような個体にも出会います。
駆け出し調査員の頃には、「これは違うものだろう」と思って、持ち帰って調べましたが、「残念!ただのイヌタデでした」ということがよくありました。明るい環境であればたいてい適応できる植物のため、個体変異の大きいところが、初心者泣かせですね。
イヌタデはタデ科イヌタデ属の一年草(いちねんそう:生育不適期を種子過ごし、発芽から結実までが1年以内の植物)で、日本全国に分布します。個体変異の大きい種ですが、イヌタデ属の基本中の基本なので、よく覚えておきたい植物です。
イヌタデの特徴は次の3点です。
花は密に着き、ピンクが濃い。東京都稲城市(10月17日)にて。
①托葉鞘(たくようしょう):葉の付け根にある筒状のものが托葉鞘と呼ばれるものです(写真参照)。この托葉鞘の縁に長い毛(鞘と同じ程度の長さ)があるのが特徴です。
②葉:形がポイントでしょうか。基本は細長い楕円形で、極端に葉の先が伸びるようなことはありません。ですから、細長い卵型(狭披針形という)になることはあまりないです。
③花:花は多数が密生します。比較的赤色が濃いピンク色です。まれに白色のものもあります。
イヌタデは路傍や耕作地周辺の明るい草地に多いので、このような場所に生育していれば、あまり間違う植物はないと思います。河川敷の湿地で見かけると背丈が高くなり、ホソバイヌタデと似てきます。ただ、ホソバイヌタデは花や葉の裏面に黄色のイボ状の腺点というものがある点で、イヌタデと区別できます。林縁ではハナタデと迷うことがあるかもしれませんが、ハナタデはイヌタデよりも花がまばらにつきます。