黒部渓谷〔宇奈月温泉~欅平〕(富山県黒部市)
9月下旬に黒部渓谷を訪れました。黒部渓谷といえばトロッコ列車の黒部峡谷鉄道が有名で、観光地としても人気の場所ですね。今回は黒部峡谷鉄道に乗って終点欅平駅まで行き、欅平から約1時間程度歩いて祖母谷温泉付近まで行ってきました。このコースは、スニーカー程度の軽装でも行けるので、これからの紅葉の黒部渓谷を満喫するのには最適だと思います。
黒部渓谷の玄関、宇奈月駅。朝一番で観光客の人影もまばら。
可愛い黒部峡谷鉄道。小さいけど力持ち。これに乗ったら「チャラ、ラーラー、チャ、ラ、ラ、ラーラー」と頭の中にあの音楽が流れました。
宇奈月温泉駅を出るとすぐに宇奈月ダムが現れます。ダム周辺は人手が加わった影響もあり、それほど立派な森は見られません。でもダムができたことによって、ダムがなかった頃には存在しなかったと思える若いヤナギ林が湖畔にできあがっていました。
宇奈月ダムを過ぎて上流へ登っていくと渓谷が現れます。宇奈月駅(標高が265m)から笹平駅(標高327m)まではコナラ林、ケヤキ林が多く、不安定な斜面にはフサザクラ林や、ヤマモミジ林などが見られました。ただ、車窓から見える斜面は急なところが多く、コナラ、アカシデ、ケヤキ等がまじって生育していて、「樹林を区分するのが難しそうだな~」という印象を受けました。つい、植生図を区分するように見てしまいます。
猫又駅~鐘釣駅の風景。出し平ダムの上流で、このあたりは谷底面が広い。
笹平駅を出ると再びダム(出し平ダム)が現れ、トロッコ列車はさらに渓谷の上流へ進みます。笹平駅から鐘釣駅(標高443m)の間はブナやミズナラもちらほらと目につきますが、基本的にはコナラ林のようでした。一方、渓谷林についてはケヤキも生育していますがサワグルミの方が多く目につくようになり、標高があがったことによって渓谷林がケヤキ林からサワグルミ林へと変化したような雰囲気でした。急な尾根沿いにはツガやキタゴヨウからなる針葉樹林も出始め、「山奥に来た~」という感じになってきました。
鐘釣駅~小屋平駅の風景。奥の遠い斜面はブナ林のようです。ただ、手前の急斜面のような場所はアカシデ等のシデ類が多い。
鐘釣駅から終点の欅平駅(標高531m)は山奥そのものです!コナラが殆ど出現しなくなり、ブナ・ミズナラ林が主体となり、サワグルミの大きな木もちらほらと目に付くようになってきました。圧巻は尾根沿いや岩場斜面に広がる立派な針葉樹林です。これが紅葉シーズンだったら、青い水面と緑色の針葉樹、赤や黄色の広葉樹が絵になること間違いなしです。
小屋平~欅平の風景。沢奥の斜面が針葉樹林です。車窓からはもっと近くで見ることが出来る針葉樹林もありました。
欅平駅に近づくと針葉樹林に冷帯上部に生育するクロベが混じるようになってきます。マニアックな視点ですが、冷温帯上部に生育するクロベと、暖温帯に生育するツガが同所的に生育する不思議な光景にかなりびっくりしました。
黒部の風を満喫できるトロッコ列車。やっぱりこの席に乗りたいですよね