梅雨に似合う花-146.イチヤクソウ-
梅雨の森の中、ひっそりと咲くのがイチヤクソウです。
草丈は15~20cm程度なので、足元に注意していないと通りすぎてしまいます。地味な花ですが面白い形をしています。雌しべが象の花のように伸び、その上に多数の雄しべがつきます。
うつむいているところを下からのぞきこむと、意外と斬新なつくりをしています。
イチヤクソウはイチヤクソウ科イチヤクソウ属の多年草(たねんそう:地下部が2年以上生存し、毎年花や実をつける)で、北海道~九州の落葉広葉樹林に生育します。最新の分類(APGIII)ではツツジ科になるようです。ツツジにはあまり似てないのに不思議ですネ。さらに、このイチヤクソウ、意外な植物と近縁です。意外な植物とは、地方版のニュースでたまに紹介されることのある、葉緑素のないギンリョウソウです。
愛知県設楽町にて(5月25日)。イチヤクソウと同じ仲間なんて・・・。
イチヤクソウが、こんなお化けみたいな植物と仲間とは意外だと思いませんか?ギンリョウソウとイチヤクソウが近縁なのですから、ギンリョウソウも最新の分類ではツツジ科に含まれます。ツツジ科の懐の深さにおどろかされます…。
イチヤクソウの特徴は次の3点です。
①:葉のつき方:葉は地面際に数枚集まってつきます。茎のように見える花茎(かけい:花のみをつける茎のような軸)には葉がつきません。
②:葉は2.5~5cm程度の長い柄があり、その先に楕円形(縦の方が横より長い)の葉身(ようしん:柄を除いた葉の部分)がつきます。葉柄(ようへい:葉の柄の部分)は赤味を帯び、葉脈はうっすらと白っぽくなります。葉の形と、色合いから慣れれば葉だけでもわかるようになります。
③花:萼はうでの長い星型。ヒトデ型と言ったほうがよいかもしれません。花の色は白色です。
比較的よく見る似た植物としては、マルバイチヤクソウがあります。これは名前が示すように葉がより丸く、葉身の縦横比は横のほうが長くなります。また、萼はうでの短い星型となります。標高の高いところではベニバナイチヤクソウというのがあり、こちらは名前のとおり花がピンクの点で異なります。