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家庭菜園や庭の記録。日本各地の自然環境や身近な植物(時々珍しい植物)を紹介しています。

春といえば黄色の花-315.タガラシ-

水田に水が入りカエルの鳴き声も聞こえるようになってきました。稲作をする水田には雑草は殆ど生育していませんが、休耕田や河川敷の湿地にキラッと輝く小さな黄色の花がありました。タガラシです。

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東京都世田谷区(5月22日)にて。同じ産地のものは撮影日同じです。

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淡い黄緑色はほぼ全てタガラシ。岐阜県羽島市木曽川河畔の湿地にて(4月4日)。

この光沢のある黄色の花弁を見れば、慣れた人なら簡単に科や属は簡単に想像できますね。全然関係ないですけど、私はタガラシを見ると、アマガエルをいつも思い浮かべてしまいます。

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こんな感じで水の中から出てくることも珍しくありません(岐阜県羽島市)。

タガラシはキンポウゲ科キンポウゲ属の越年草(えつねんそう:秋に発芽して冬越し、翌春に開花・結実して枯死する)で、日本全国の湿地に生育しています。湿地の中でも泥質で水がはってあるような湿地に多い気がします。

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下流河川の富栄養気味の湿地では結構大きくなります(岐阜県羽島市)。

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こちらはちょっと水が少なめの湿地に生育するやや小型の個体(東京都世田谷区)。

越年草の割には大きくなる植物で、大きいものは膝丈以上になりますが、一方で10cm程度でも開花結実していることがあります。とても同じ植物には見えないのですが、どちらも同じ植物です。越年草は生育する環境によって大きさが異なることがよくあり、育った環境に応じて大きさを変え、生育環を完結させる特徴があります。条件の悪い環境でも文句も言わず、しっかり生き抜くタフな植物といえます。

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日向では全体的にキラキラとした感じがあります(岐阜県羽島市)。

ところでタガラシの名前の由来には荒れた田にはえるから「田枯し」と、噛むと辛いから「田辛子」があるようです。私的には前者の由来を押します。その理由は後者を確かめる気分にはならないからです。タガラシと同じ属のキツネノボタンウマノアシガタは有毒植物なので、タガラシにも毒があると思われますので、あまり食べない方がよいでしょう。

タガラシの特徴は次の4点です。

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①茎:茎は直立して殆ど無毛。
②葉:葉は単葉3-5中裂~深裂し、裂片にはさらに浅い切れ込みがあります。上部の葉ほど裂片が細くなり、葉柄の長さも上部ほど短くなります。キツネノボタンウマノアシガタに比べると葉に光沢があり、殆ど無毛です。この光沢感が私にアマガエルを連想させます。

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③花:花弁は5枚で光沢のある黄色。花弁は小さめで花の直径は1cm未満です。中央の雌蕊群は緑色です。
④実:果実は多数の実からなる集合果(しゅうごうか:写真参照)です。集合果は楕円体から円柱形で長さは8-14mmです。実は密集する上に嘴が殆どないため、つるんとした雰囲気でキツネノボタンのようにトゲトゲした感じはありません。

よく見かける類似種にはウマノアシガタキツネノボタンケキツネノボタンがあげられます。ウマノアシガタは湿地というよりも湿った草地にはえることが多いので、タガラシとは生育環境が異なります。キツネノボタンとケキツネノボタンはタガラシと生育環境が似ており、混生することもあります。キツネノボタンとケキツネノボタンは葉や果実の形が全く異なるので間違うことはないと思います。一番似ている植物はヒキノカサですが、ヒキノカサは珍品なのでそうそう見ることはないと思います。