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家庭菜園や庭の記録。日本各地の自然環境や身近な植物(時々珍しい植物)を紹介しています。

牧野富太郎先生の好きな花-309.バイカオウレン-

バイカオウレンは早春に白い可憐な花を咲かせる植物です。四国地方の暖地では2月下旬には咲き始め、岐阜県南部の山では3月下旬~4月上旬に咲きます。今年は暖冬だったので、いつもより早く咲いているかもしれません。

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岐阜県養老町にて(4月20日)。下の写真も撮影日・撮影場所同じです。

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群生することが多いので、個々の花は小さいけど結構目立ちます。

バイカオウレンは漢字で書くと梅花黄蓮で、梅に似た花をつけるオウレンの仲間という意味です。確かに花の形は梅の花に似ているような気もしますね。私がバイカオウレンから連想するのは、大御所、植物学者の牧野富太郎先生です。去年、牧野富太郎先生の生家を訪ね、その際に見た裏山の見事なバイカオウレン群生地が印象に残っています。また、バイカオウレン牧野富太郎先生が好きだった花で、その葉は高知県立牧野植物園ロゴマークにも使用されいます。

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牧野富太郎先生のお墓近くの群生地。高知県佐川町にて(2月22日)。

バイカオウレンキンポウゲ科オウレン属の多年草(たねんそう:地下部が2年以上生存し、毎年花や実をつける)で、福島県以南の本州・四国に分布します。生育可能な気候帯は広く、亜寒帯針葉樹林~暖温帯までの樹林内や林縁に生育します。

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花が終わるとこんな面白い形の実(オウレン属共通)をつける。岐阜県七宗町(4月16日)。

生育環境は幅広いですが、どこにでも生育する植物という感じではなく、ちょっと奥山に行かないと見ることができない植物だと思います。個人的にはバイカオウレンが咲く樹林は自然性の高い樹林だと思うので、ついつい他に変わったものがないかと探してしまいます。バイカオウレンを含むオウレン属の仲間は薬用植物として古くから利用され、胃腸薬として用いられていたようです。

バイカオウレンの特徴は次の3点です。

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①生え方:地中を這う地下茎を出すので、小規模に群生することが多いです。一面の大群落となることは、それほど多くないような気がします(管理された環境であればありえます)。

②葉:葉は地際に集まり、掌状複葉(しょうじょうふくよう)小葉(しょうよう)は5枚、外縁の形状が五角形になります。葉の表面は光沢があり、縁は鋸歯(きょし:葉のぎざぎざ)があって、一部はかなり深く切れ込みます(欠刻状と表現することが多い)。

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③花:花は茎の先に1個だけつき、直径は1-2cm、白色で梅の花のような雰囲気があります。白色の花びら(花弁)のように見えるのは萼片で、萼片は5枚あります。

バイカオウレンに似た植物としてはキタヤマオウレン、ミツバノバイカオウレン、ヒュウガオウレン、オオゴカヨウオウレンなどがあげられます。最も普通に見られるのは、このバイカオウレンか、高山~亜高山に多いミツバノバイカオウレンではないでしょうか。いずれも似ていますが、葉の形状と地下茎の有無で区別できるようです。