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家庭菜園や庭の記録。日本各地の自然環境や身近な植物(時々珍しい植物)を紹介しています。

出会うとうれしい植物-293.オケラ-

きれいな植物や珍しい植物に出会うと当然うれしくなりますが、それほどきれいでもなく、珍しくもないけど、出会うとうれしくなってしまう植物があります。私にとってはオケラがそんな植物です。

 

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山形県川西町にて(10月20日)。オケラの写真は撮影場所・撮影日同じです。

オケラに出会うと、つい「あっ、オケラじゃん。ここはいい樹林だね~。」と言ってしまいます。なんでオケラが生育している樹林がいい樹林なのかって?

これは個人的な感覚で、地域によっても違いはあると思いますが、オケラの生育する樹林は種多様性が高いような気がします。15m×15m程度の大きさの方形区で調査すれば、植物種は50種以上出現すると思います。これが多いか少ないかは調査したことがないとわからないと思いますが、ブナの巨木がはえる自然林などでも30~40種程度、スダジイ等の常緑広葉樹林の自然林だと20~30種程度ということもあるので、オケラの生育する樹林は種の多様性が高い方だと思います。

 

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オケラと同じ頃に咲くツリガネニンジン。こんな植物がたくさん生えている樹林は歩いていても楽しいですね。東京都八王子市(10月18日)。

また、オケラの生育する樹林は花のきれいな草が多い傾向にあると思います。東日本であれば、ツリガネニンジンアキノキリンソウオオバギボウシヤマユリ、ヒメヤブラン、シュンラン、ササバギンラン等、多くの草本類が生育しています。オケラが生育するような樹林は歩いていて他にも珍しい植物があるのではないかと、ワクワクします。

 

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オケラが生育するような若い落葉広葉樹二次林(コナラ林)。山形県川西町(10月20日)。

ここまで聞いてよく山を歩く方ならおわかりかもしれませんが、オケラは明るい若い落葉広葉樹林(二次林)に出現する傾向があります。最近は山を管理しなくなったり、樹林が成長したりして、植生遷移が進み、うっそうとした森が増える傾向にあります(これはこれでよい時もあります)。オケラが住みやすい明るい森は少なくなっているのかもしれませんね。

 

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オケラの花。もうこれは終わりかけですね。大人っぽい雰囲気の花です。

オケラはキク科オケラ属の多年草(たねんそう:地下部が2年以上生存し、毎年花や実をつける)で、本州~九州の草地や明るい樹林地に生育しています。別名ウケラで、万葉集にも歌われる古くから馴染みある植物のようです(昔はたくさんあったのかな?)。薬用植物としても珍重され、正月に飲むお屠蘇の原材料の一つになっていることもあるようです。

オケラの特徴は次の3点です。

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①全体容姿:茎は直立して膝丈程度の大きさになります。茎は細いですが硬く、葉もパリッとした硬い雰囲気があります。

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②葉:葉は互生(ごせい)し、少し光沢のある感じです。葉の形は花の咲かない小さな個体や茎の上部の葉は単葉(たんよう)ですが、花の咲く個体の下部の葉は3出複葉1回羽状複葉になります。葉の縁に硬い毛のような細かい鋸歯(きょし)が多数並びます。

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③花:頭花(とうか)の直径は1-2cmで、少し不思議な形をしています。一番外側に暗褐色の網のようなものがあり、これは一応苞葉(ほうよう:花の下につく葉)ということのようです。網は魚の骨のような形をしており、それをめくると総苞(そうほう:キク科植物の花の基部の鱗状の苞が集まった部分。普通の花の萼のように見える部分)が現れます。小花(しょうか)は白色~暗紫色です。

オケラは日本では1属1種なので、花が咲いていれば、似た植物はありません。葉の形や質感にも特徴があるので、慣れれば葉だけでも同定できます。